ババン時評 れいわ新撰組の教訓

 

先の参院選では、「れいわ新撰組」から出馬した身体の不自由なお二人、舩後・木村両議員が誕生した。だが「おめでとう」だけでは済まない違和感がある。お二人の国会通勤?や議員活動中における介助費用を、当面の間、参議院が負担するとの決定には批判の声も上がった。いわく、選出した政党が出せ、自分で負担しろ、と言った具合だ。

現在の介護制度では、身障者が、通勤や仕事中に必要とする介護サービスを受けることはできない。それをやってヘルパーさんを雇うには、その費用を自前で賄うか雇用主に出してもらうことになっている。そこで、れいわ新撰組(以下「れいわ」)の山本太郎代表や舩後・木村両議員は「障碍者は働くなということでしょうか」と訴え、障碍者の就労と介助の制度改革を目指している。

山本代表は、両議員への介護サービスを参議院が負担するのは当然だとする。しかし、介助制度の改革は、これからの議員活動を通じて実現を目指すべき課題ではないか。制度改革を実現させる前に、暫定的にしろ介助の“恩恵”を参議院から、つまりは税金から受けるのは問題だろう。

また山本代表は、両議員を「寝たきり界のトップランナー」と語り、「生産性で人間をはかる世の中に挑戦し、国会論戦をしてもらいたい」とも語っている。ぜひ有意義な国会論戦を展開してもらいたい。ただし、国会議員とりわけ参院議員の役割は、一地域や特定組織、特定案件のために働くことではない。参議院議員本来の役割は、衆議院の決議を経て回ってくる法律、予算、条約などの案件を、公正中立の立場でチェックし、審議することだ。

参院議員の立候補は30歳以上と衆院議員の25歳を上回るのも、一定の知識や経験が必要だからだ。本来、知識や経験の乏しい立候補者が当選することは好ましいことではない。これは身障者を特定して言っているのではない。近年、マスコミを賑わすおかしな議員が増えているからだ。

山本代表は、「れいわ」が政党要件を満たしていないとして、マスコミが選挙運動中の「れいわ」を取り上げてくれなかったが、それがなかったら大変な“れいわ旋風”が起きたはずだと言う。しかし、マスコミ受けで大型の“れいわ旋風”を起こし、それによって当選議員を増やそうとするのは、トランプを生んだ米国やEU離脱を決めた英国のような、浮かれ選挙民と危ない政治風土を助長する恐れがある。(2019.8.7 山崎義雄)