ババン時評 文在寅“怒り政策”の持続性

 

よくもまあ、次から次へと日韓の火ダネが尽きないものだ。今度は文韓国大統領が、日本の対韓輸出制限を批判して「盗人猛々しい」と発言したとして日本側の怒りに火をつけた。大騒ぎになる少し前に、漫然とテレビを見ていたら、座談の中であるジャーナリストが、「賊反荷杖(チョクパンハジャン)」という四字熟語の原義は、「ムチ打たれるべき賊がムチを持つこと」だと話すのを聞いた。

そこで、ああナルホドと合点がいき、盗人云々の“翻訳”はまずかったのではないかと気がついた。どうやらこの韓国熟語は、「加害者が居直る」というような意味で使われるものらしい。とはいえ、「加害者が居直る」という意味でも決して穏やかならざるものであり、韓国特有の歴史的偏見で日本を侮蔑しているということに変りはない。

ところが今度は逆に韓国側が、日本のマスコミが一斉に盗人云々と報道したのはおかしいとか、日本は大本営発表のように報道管制を敷いているなどと怒っているようだ。韓国人の怒り方はどこに“跳躍”するか分からない。大本営まで出てくる。いつも度を越して過激だ。

この自己主張の激しい韓国人の特性は、高句麗をはじめ歴史的に中国への朝貢国だった韓国が中国から学んだものかもしれない。たとえば孫子の兵法が教える“詭道”的な自己中心の論理と弁舌を操る中国から学んで身に着けたものではないか。その背景には、中国に対する劣等感と同時に中国文化を学んで日本の上位に立つ“小中華”としての誇り、などという屈折した心理もありそうだ。

ともあれ日本は、7月に対韓輸出規制を始めたが、8月には半導体材料の一部について、問題ないと判断した韓国企業に向けて、初の輸出許可を出した。これに対して韓国は「不透明性がある」などとして評価せず、相も変わらず「優遇措置」(元のホワイト国)からの韓国除外の撤回を主張している。依然として関係改善の糸口は見えない。

しかし日本はこれからも淡々と第2弾、3弾と輸出許可を繰り出すだろう。それにつれて徐々に韓国内の保守派や“無党派層”の文政権批判の声も高まるだろう。その時、国内外に向けて大げさに騒ぎ立ててきた文大統領の“怒り政策”がどうなるか。次の大統領選挙に向けてどこまで“怒り政策”による支持率維持を持続できるのか。これは案外、見ものではないだろうか。(2019・8・9 山崎義雄)