ババン時評 大相撲 仕切りの不公平

先に「ババン時評 傍若無人の白鳳が親方に」を書いたが、今回は白鳳相撲の糾弾ではなく、畏友 後藤忠紀(北海道在住)が広く世間に訴えている「大相撲 仕切りの不公平」の紹介である。彼は3場所続けて各力士の立ち合いを分析した結果、公平・公正な「仕切り改革案」を提唱するに至った。

まず大相撲には他の競技のような明確なスタートの合図がない。行司「手を着いて!」その後の立つタイミングは? ナント両力士に委ねる。それによって仕切り方が分かれる。A=即座に両手を着いて静止する、正統派。B=片手を着いて静止し、相手が手を降ろした瞬間、片手も着けて立つ、多数派。C=A、Bが先に手を着いて待っているところに、素早く手を降ろして勢いよく立つ、大多数。そこで競技は本来、公平公正であるべきだが、相撲には不公平が生じることになる。

第1が不安とプレッシャー。A・BはCがいつ手を下ろすか分からない不安、さらに合わせなければいけないというプレッシャーがある。第2に立ち遅れ。A・BはCの動き始めを確認した後に立つので必然的に10~100分の数秒遅れる。第3に勢いの差。Cは一瞬だけ手を下ろし(VTRを見ると着いていないことも多い)、勢いをつけて立つことができる。一気に押し出す電車道はCが多い。ABCを使い分ける力士も多い。

そこで、不公平を解消する「仕切り改革案」を考えた。行司「手を着いて!」 両力士は即座に両手を着き、3秒以上静止する。行司はそれを確認後、立つ、の合図の「良し!」を発する。これによって立ち合いにおける不公平は全て解消する。

先の名古屋場所の幕内力士の仕切り方をA両手、B片手、C後出しに分類すると、一山本は15日間両手を着いた。大栄翔、志摩ノ海14日。宝富士、翔猿12日。相撲の精神を心得ている彼らはこれからも両手を着くことだろう。一番不利な仕切り方にもかかわらず―。

ちなみに白鳳、照ノ富士の両手下ろしは1日だけ。さらに、彼の「令和3年大相撲名古屋場所仕切り分析表」によると、白鳳は両手1回、片手1回、後出し13回。照ノ富士は両手1回、片手0回、後出し13回、同時1回で、そのうちの両手下ろしの1回は白鳳戦だ。先輩に敬意を表したのか、してやられたのか。また徹底的な後出しは豊昇龍の15回。いずれもモンゴル勢だ。

白鳳は引退して年寄り「間垣」を襲名したが、相撲協会の方針や角界の仕来たりに従う内容の誓約書を書かされた。この機に相撲界は、不公平な仕切りの改善や肘打ちのような危険な技の禁止など相撲ルールの改革に取り組むべきではないか。(2021/10/19 山崎義雄)