ババン時評 幼児救出作戦

「幼児救出作戦に足りない視点」先の2歳児救出劇は感動的だった。教訓は、「大人目線」ではなく、「子供目線」の捜索だ。救出に成功した尾畠さんは、経験から「幼児は坂を上る」と見た。ここが重要。

専門家や大人は、このような事件の推理や分析を「大人目線」で論じるから、見当はずれの捜索が展開されることになる。大事なのは、「子ども目線」、言い換えれば子供の心理と行動、その子の個性と行動の分析に基づく捜索計画であろう。

ここからは私の現役時代の先輩Y氏の説を借りる。幼児の一般的な特質は、①思いがけない距離を移動すること。元気にまかせて歩き、興味にまかせて止まったり、歩いたりして相当な距離を移動する。今度の2歳児にとっても、550メートルはさほど遠い距離ではない。②幼児は行方不明時の説明ができない。その間、どうしていたのと聞いてもムダ。時間的な連続性も、行動的な論理性もない。記憶はあるが断片的である。③大人と子供は興味の対象が違う。大人が聞きたい失踪時の内容と、幼児が見て、感じていた興味の対象や景色が違う。④幼児は自然児である。動物としてのDNAを持っている。行動し、疲れたら休む。眠くなったら眠る。お腹がすいたと思っても食べるものはない。しかし大人ほど切実ではない。時間の観念もなく、死の恐れもない。誰かが来てくれることを無意識に信じている。だから捜索の尾畠さんが呼ぶと「ぼく、ここ」と答える。

結論的に言えば、幼児行方不明の原因は「大人の不注意、油断」であるが、捜索の原点は「子供目線」で寄り添う「幼児行動の理解」であろう。(2018・9・10)