ババン時評 呆れた「天皇謝罪要求」

 

呆れた話だ。日韓の間でこじれている慰安婦問題について、韓国国会議長の文喜相(ムン・ヒサン)とかいうご仁が、天皇陛下が元慰安婦の手を握り「本当に申し訳ない」と謝罪すれば「その一言で問題は完全に解決する」と述べたという。それに抗議した日本政府の対応には、「韓日両国間で不必要な論争を望んでもおらず、起きてもいけない」と語ったという。

文議長は、文在寅政権の大統領特使として訪日したこともある日韓関係のパイプ役であり、それ以前には韓日議連会長でもあったという。「起きてもいけない」「不必要な論争」を起こしたそもそもは、かりにも「知日派」とは言い難い日本人の真情に理解が及ばない不見識だ。

さらには、今上天皇先の大戦を起こした「戦争犯罪人の息子」とまで言ったという。いたずらに日本の国民感情を刺激しておいて「不必要な論争を望んでいない」とはどういうことか。政治に介入しない象徴天皇としての立場も知らない元韓日議連会長とはあまりに情けない。知っていて意に介さず、天皇まで引き合いに出すのは日本の精神文化まで土足で踏みにじるに等しい。

これは前にも書いたことだが、日本の天皇は、歴代、民の安寧を祈ってきた。古代の崇神天皇は、疫病が流行って多くの民が死んだとき、この悲惨な状況が続くのは自分の神祭りが足りず、天に祈りが届いていないために神の咎めを受けているのだと自らを責め、神に助けを乞い願ったという。加瀬英明著「日本の奇跡、中韓の悲劇」では、『平安時代平城天皇は、大規模な水害に見舞われた後に、「朕の真心が、天に通じず」天災を招いてしまったが、「この災いについて考えると、責任は朕一人にある」といって、自分の不徳を責めている』と言っている。

現代でいえば、昭和天皇マッカーサーに「私は、戦争遂行の過程で発生したすべての事態に全責任を負う。全指揮官と全政治家の行動にも責任を負う」と述べている。しかし米国はこれを言質にとって利用しなかった。

ひるがえって韓国は、李氏朝鮮王朝の殺戮・暗殺の歴史、韓国初代大統領 李承晩に始まる大統領による殺戮・暗殺、複数大統領の刑死・自殺の歴史を忘れてもらっては困る。韓国政府の対応には、文議長の「日韓両国間で不必要な論争を望んでもおらず、起きてもいけない」という言葉をそっくりそのままお返ししたい。(2019・2・15 山崎義雄)