ババン時評 国語軽視の“言葉壊し”

文科省による「国語世論調査」では、「国語が乱れている」と感じている人は66%。20年前の調査より約20ポイント少なくなっている。同時に、本来の「言葉」の意味を正しく理解している人がどんどん少なくなっているという。だが「敬語」について、使い方が「適切とは言えない例」を示して聞くと、「気になる」と、まともに答えている人が増えている。

まず言葉の意味では、「浮足立つ」の正しい意味は「恐れや不安を感じ、そわそわしている様子」だが、正解はわずか26・1%で、なんと60・1%の人が「喜びや期待を感じてそわそわしている」という意味だと答えている。次いで「敷居が高い」の意味では、「相手に不義理をしていて、行きにくい」と正解した人は29%で、なんと56.4%の人が「高級すぎて入りにくい」と答えている。言葉の意味も変わってくるということか。

とはいえ近頃のはやり言葉には閉口する、就活、婚活などの新語を「使う」人は54.4%。特に20代は73.2%に上る。パワハラモラハラ、意味を強める「ガン」を使った「ガン見(がんみ=凝視)」、「ガン寝(熟睡)」など高齢者には耳慣れない言葉も若い世代を中心に「使う」人が5~7割に上るという。

一方、気になる「敬語」の“誤用”については、8つの例示すべてに対して「気になる」という回答が増えているという。中で最も「気になる」用例は、「規則でそうなってございます」で、81.5%の人がこれを挙げている。逆に、最も「気になる」人が少なかった用例は、「先生は講義がお上手ですね」の32.4%である。少ないながら、これが「気になる」人達は言葉に敏感で、敬意を持つべき先生を評価したり、ほめるような表現に抵抗感をおぼえたのではないだろうか。

この調査で見えてくるのは、誤解を恐れずに言えば、日本人の言葉に対する自信のなさ、極言すれば自信の喪失ではないか。そして今、SNS時代において日本語の乱れを自覚する一方で、正しい日本語の用例や敬語を大事にすべきだという思いもあるということなのだろう。

池上彰佐藤優「人生で必要な教養は中学校教科書ですべて身につく」(中央公論新社)では、国語教科書は他の教科と違って内容は昔とあまり変わっていないと言う。そして池上氏は「日本語の読解力は義務教育レベルをマスターすれば卒業できる」と言い、佐藤氏は「社会に出ても十分耐えうるレベル」だと太鼓判を押す。SNS時代における国語軽視と“言葉壊し”を容認する風潮を改め、今一度「中学国語」レベルに立ち返る教育が必要ではないか。(2020・10・17 山崎義雄)