ババン時評 初夢・日本主導の太平洋連合

令和の始まりはコロナに席巻された。世界の状況も暗い。安倍前首相と違って菅首相外交政策を語ることはあまりない。米中の間に挟まって未だに立ち位置も定まらない。米バイデン新大統領との連携もこれからだ。令和3年の年明けも明るさが見えそうにない。

そんな具合に悲観的だった今年、北岡伸一東大名誉教授の「太平洋連合構想」が目を引いた(読売新聞R2.11.1)。教授は言う。戦後、日本の復興と発展は東南アジアに及び、その経済成長と政治的民主化を促した。インドネシアとフィリピンは過去20年間、民主的な選挙で平穏に政権を交代している。これは驚くべき変化だとー。

そしてASEAN憲章は、①独立と主権の尊重、②法の支配、民主主義の原則の支持、③基本的自由と人権の尊重、④国連憲章国際法の支持、などを掲げる。このアジア憲章を尊重すれば、中国の行動は、どう見てもこれに反する。それに、超大国が入ると地域機構はうまくいかない。それゆえ中国は「太平洋連合構想」メンバーとしない。同じ理由で米国も入れない。ただし、強固な日米同盟は構想の前提でもある。

さらに教授は、北朝鮮も韓国も含めるべきではないと言う。韓国は1065年の日韓基本条約をはじめいくつもの合意を一方的に見直した。親日的言論は処罰し、新日派の子孫から財産を没収するなど、法の支配と両立しない。他方、台湾やバングラデシュは入ってほしいと言う。

古代中国の故事「合従連衡」は、西方に台頭した秦に対して、東方の6カ国(韓魏趙燕楚斉)が縦につながる「合従」で対抗したが、秦は1か国ずつ横につながる「連衡」の策で6カ国連合を切り崩した。北岡教授は、今の中国もこの連衡策で1国づつを切り崩そうとしていると見る。しかし今は、東に米国が、西に未来の超大国インドが控えているー。

そこで教授は、「私は、ヨーロッパの欧州連合EU)やアフリカのアフリカ連合AU)のような西太平洋連合(WPU)を日本とASEAN諸国との間で作り、さらに豪州、ニュージーランド、太平洋諸国も加えた太平洋連合(PU)にできないかと考えている」と言うのだ。

北岡教授に師事する細谷雄一慶大教授は、自著「歴史認識とは何か」で、日本は日本の構想を、国際主義的な精神の中で孤立することなく実現していくことが重要だと説いている。菅首相や政府・与党の先生方、政財界のリーダーたちは、正月休みにでも日本が主導する太平洋連合(PU)構想を考えてみるとか、初夢にしてみてはどうか(2020・12・14 山崎義雄)