ババン時評 ノドにホネは徴用工問題

12年ぶりといわれる日韓首脳会談では、岸田首相と尹錫悦韓国大統領は、戦後最悪と言われる日韓関係の改善を目指した。しかし今後の見通しは甘くない。直近の世論調査によると、読売新聞社と韓国日報社による共同世論調査(5月26~28日)では、現在の日韓関係を「良い」とした人は、日本で45%(前回2022年調査17%)、韓国で43%(同17%)と大幅に上昇した。

しかし徴用工問題では韓国政府による解決策について日本では「評価する」が57%、「評価しない」が31%だが、韓国では「評価する」36%、「評価しない」が59%と逆転する。解決策で問題が最終的な決着に向かうと「思う」とした人は日本で22%、韓国で18%と、ともに少数にとどまった。関連して、歴史問題にとらわれずに日本との関係改善を目指す尹氏の姿勢を「評価する」としたのは、日本で85%だったのに対し、韓国では50%にとどまった。

朝日新聞の全国世論調査(3月18~19日)では、日韓首脳会談を「評価する」が63%で、「評価しない」21%を上回った。内閣支持率は40%に上昇。韓国政府による徴用工解決策については3割が評価せずとしながらも、今後の日韓関係は「よい方向に進む」が37%となっている。毎日新聞による5月7日にソウルで行われた日韓首脳会談を受けての全国世論調査では、日韓関係は「改善するとは思わない」が41%で、「改善すると思う」は38%、「わからない」は21%だった。

NHK(5月12日)によると、5月7日に行われた日韓首脳会談についての韓国の世論調査(韓国ギャラップ調査)では、「成果があった」と答えた人は33%、「成果がなかった」が49%となったとして、韓国国内で今回の会談を評価する人が一定程度いる一方、否定的な見方の人も依然として多いことを裏付けた形になった。「成果があった」と答えた理由は、「日韓関係改善」が32%、「経済面など」11%、「岸田首相の発言」3%などだった。

次いで、徴用工問題に関する韓国世論では、意外にも尹錫悦政権が打ち出した元徴用工らへの賠償金支払いを韓国の財団が肩代わりする「解決策」について、「評価する」が55%と半数を上回り、「評価しない」という回答は28%となった。

こうした歴史認識をめぐっては、日本側には、元慰安婦の問題で苦い記憶がある。2015年に不可逆的、つまり蒸し返さないという合意が日韓の間で成立したが、その後の韓国の政権交代で事実上棚上げのような形になった。いま日韓関係改善の大きな宿題を背負わされているのが尹大統領であり、「ノドにホネ」の懸案事項は元徴用工への賠償問題であり、この問題を解決するのが尹大統領の大きな宿題であることが明らかだ。(2023・7・4 山崎義雄)