ババン時評 漂流するアベノミクス

 企業業績が伸びているにもかかわらず、アベノミクスが期待する賃金の上昇も、企業の設備投資も伸びず、最終目的の物価上昇も見えてこない。その上、今回の入管法改正による安い労働力導入で、ますます日本の低賃金化が進む懸念もある。

ハイパーインフレが起きて日本の経済は崩壊するという説がある。ハイパーインフレは困るが、適度な?インフレが起きればアベノミクスのデフレ脱却は達成され、財政赤字も改善される。しかし今のところインフレどころか、アベノミクスの期待するささやかな物価上昇さえ起きる気配がない。

要するに、アベノミクスの機能しない原因は、目先の問題としては、賃金が上がらない、可処分所得が伸びないためだ。しかしアベノミクスが狙う物価上昇目標が達成できない原因は他にあるのではないか。

いまわが国は、物価上昇やインフレの起きにくい時代への転換点にあるのではないか。つまり、中長期的に見れば、急激な人口減少と高齢化の進行するわが国の現状と将来に原因があるといえるのではないか。

とりわけ大きな問題は労働生産人口の急激な減少だ。「日本の将来推計人口」によるとその労働生産人口は現在の8、000万人弱から2060年には4、000万人を少し上回る程度まで減少するという。その間、高齢者人口のほうはさほど増えるわけではない。むしろ4,000万人弱の横ばいで進み、2040年をピークに微減で推移する。しかし人口構成比では高齢者の比重が重くなる。

かくして、減少する労働者と比重を増す高齢者でかたちづくる未来社会においては、モノやサービスの総量が伸びるわけがない。すなわち需要も購買意欲も総量としては減少に向かわざるを得ない。これでは、多民族国家でも目指さない限り、景気の過熱もインフレも起こらない。少なくともわが国自体にインフレを起こす力?はない。収縮する未来の社会に向かう時代の曲がり角で、アベノミクスはもがいているのではないか。(2018・12・13 山崎義雄の「ばばんG」に同テーマの拡大版あり)