ババン時評 巧言令色鮮し仁

 

安倍首相は、育ちの良さからくるプライドで態度が高慢に見える。国会答弁でも負けん気でひと言多くなる。言い過ぎてもなかなか素直に謝らない。「巧言令色鮮(すくな)し仁」という。安倍首相がそうだとまでは言わないが、多弁・雄弁で逆ねじを食わせるような首相の答弁はよろしくない。

安倍首相は、よく「丁寧に説明して理解を得る」とか「真摯に受け止める」とか言うが、安倍首相のイメージに似つかわしくないそいう空疎な発言に鼻白んでいる国民は少なくない。モリカケ問題における自分と妻の弁護主張でも、先の自衛隊かわいそう的な擁護論でも、勤労統計不正への関与否定でも、残念ながら安倍首相の発言には誠実みや真実みが欠けている。

この国会で安倍首相は、第1次安倍政権下で行われた12年前の参院選に触れ、「わが党の敗北で政治は安定を失い、悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と発言して物議をかもした。

安倍首相にとって、自民党にとっては「悪夢のような民主党政権」だったであろうことは分からなくはないが、それは内に秘める反省材料であり、公言すべきことではない。多弁ゆえのよけいな発言だったのなら柔軟に撤回・謝罪すべきだが、安倍首相は決してそれをやらない。

この安倍首相の「悪夢のような民主党政権」発言について、同じ自民党石破茂元幹事長は「過去の政権を引き合いに自分たちが正しいと主張するやり方は危ない」と批判した。多くの国民は石破氏の言う方が正しいと思うはずだ。

なにより、悪夢のようだと安倍首相が公言する民主党政権を選んだのは国民だ。その政権を表面きって非難するのは「天に向かって唾をする」ようなもので、たちまちわが身に降りかかってくる。反省して褌を締め直さなければ、今度の参院選にご用心ということになる。(2019・3・3 山崎義雄)