ババン時評 コロナ防止の旗手は中国?

あるテレビ番組で、知識人?で常連コメンテーターの一人が、コロナ対策でトランプ大統領は世界的な役割を何もやっていない。一番頑張ってやっているのは中国だ、と言っていた。見当はずれで中国の思うつぼにハマる発言だ。

たしかにトランプの自国第一主義のコロナ対策は困りものだが、中国の動きはそれどころではない。中国は今、世界にマスクや医薬品を配り、時には医師団を派遣し、新薬の生産・供給を急ぐなどして、世界を、とりわけ途上国を手なずけて取り込もうとしている。

中国コロナの突きつける課題はいろいろだが、3つほど挙げれば、①国際化時代に必要なグローバルな国際連携、②防疫強化がもたらす国家権力の拡大・強化、③情報機器の利用による監視社会と人権侵害の拡大、などだろう。

①で言えば、中国は、コロナ隠しの情報統制を強めて、国際的なコロナ対策に必要な中国の実態に関する十分な情報提供を行っていない。コロナ発生源の責任転嫁まで策略を巡らしている。要するに独善的な中国はグローバルな国際連携を阻害する。

②で言えば、習主席への権力集中が強化され、コロナ防止に必要な政府内の情報共有や関係機関への権限移譲が行われていない。政権幹部も関係機関も習主席の指示がなければ何も言えない、動けないという。明らかに西側諸国の民主化と決別する方向だ。

③で言えば、国民はネットや顔認証システムなどで監視され、反政府発言は厳しく封じられている。コロナでも、ハイテク技術で感染者の行動経路や位置情報の把握から強制隔離まで管理されている。この人権侵害の社会監視はコロナ後も強化されるだろう。

こうして中国は今、コロナ発生の責任も明らかにせず、これを奇禍として国家権力の強化と世界覇権を狙う。戦後の歴史の上で、中国の経済発展を支援すれば民主化が進むと考えた西側リーダー諸国の期待は見事に裏切られた。コロナ禍まで逆手にとって世界覇権を狙う中国に世界はどう対処するのか。少なくともトランプ流一国主義では対応できないことは確かだ。(2020・4・23 山崎義雄)