ババン時評 ひと山超えてどこへ行く

コロナ禍の先行きはまだまだ予断を許さないが、ようやく第1波のピークを越えたとして、安倍政府は39県に対して緊急事態宣言を解除した。同時に、政府の専門家会議が地域振興とともに新たな警戒態勢を要請する新提言を発表した。新型コロナ対策は新たな段階を迎えることになる。

提言では、コロナの再拡大を防ぐために、各都道府県がそれぞれの感染状況に応じて、①「特定警戒」、②「感染拡大注意」、③「感染観察」のいずれに当たるかを判断し、適切な対策を講じることを求める。「特定警戒」は東京都をはじめ今回解除されなかった8都道府県が該当する。

優等生の岩手県は「感染観察」にも当たらないと思うが、達曽知事の感想を聞きたいものだ。先ごろコロナ対策に取り組む著名な4県の知事が“テレビ参加”していたが、その一人の達曽知事の発言ぶりは控えめで、感染ゼロを自慢するでもなく、むしろゼロを守り切る重圧とストレスを感じているようにさえ見えた。余計なことだが、この4人に“露出願望”の強い小池都知事は呼ばれなかったようだ。

その小池都知事は、安倍首相の緊急事態宣言の緩和発表と専門家会議の提言に続いて即座に「東京アラート」なる新語とともに都の新しいコロナ対策原案を公表した。中身は、事業者に向けた休業解除の条件として、「感染者は1日20人未満」「感染経路不明者は50%未満」「週単位での感染減少」などクリアーすべき7つの条件をあげ、いったん休業解除したのち条件の1つでも悪化した場合は「東京アラート」を発令するというもの。

ついでに言えば、今回コロナにおける「三密」は、小池知事の造語を安倍首相が拝借したものだと思うが、古くは密教真言宗の教えに「三密」があり、行動、言葉、精神の尊さを説いているという。この「仏教三密」を借りたとすれば、「コロナ三密」は“造語”ならぬ“造意”とでもいうべきか。

ともあれ、専門家会議の尾身茂副座長は「コロナ対策の緩和で感染が再燃する可能性がある。感染拡大の防止と社会経済のバランスをとらなければならない」と述べている。それにはまだいたずらに人間の行動半径を拡大することなく、まずは地域社会中心の経済・生活の建て直しに、地域をあげて取り組むべきだろう。(2020・5・16 山崎義雄)