ババン時評 「改憲」遥か、門前論議

また野党、というより立憲民主党国民投票法を巡って逃げの姿勢だ。こんなことでは、二度と野党に政権が回ってくることはないだろう。4月15日、衆院で、憲法改正の是非を国民に問う「国民投票法」改正案の審議が始まった。しかし、ハナから立憲民主党立民と共産党は、法案の早期成立に反対した。しかも自民党立憲民主党は、昨年暮れに、改正案について今国会で「何らかの結論を得る」ことで、合意していたにもかかわらず、である。

立民の「言い訳」は、「何らかの結論を得る」とは、改正案だけを採決するという意味ではない。国民投票に向けた運動中のCM規制を含めた十分な議論を尽くすべきだ、というもの。そもそも「何らかの結論を得る」とした合意の前提には「十分な議論を尽くした」という共通の認識があったはずだ。かりに十分な論議とはいえないまでも、「何らかの結論を得る」時期だとの共通認識があったというべきだろう。その前提・認識を平気で覆すような公党では国民の支持を得られるわけがない。

しかも国民投票法改正案の中身が情けない。国民投票の際、市中の商業施設に共通投票場を設けるかどうか―、国民投票運動中のCM規制をどうするか―。こんな論議を長々とやっているのである。改憲論議に比べたら情けないレベルの些末な手続き論議ではないか。これで、自民、公明、日本維新などが7項目にわたる改正案を衆院に提出した2018年から計8国会にわたって継続審議となっているのだ。

簡単に言えば、今や憲法審は、野党の抵抗で非効率極まりない状況になっている。共産党の反対姿勢は当然?だが、改憲反対分子を抱える立民は常に挙動不審になる。肝心の憲法改正論議もいつのことやらだが、その前段の、国民投票法改正案の審議は、安倍前首相や歴代保守政権が目指した憲法改正という「本丸」とはだいぶ距離のある「門前」のささいな揉め事だ。

安倍前首相は安保関連法の制定という大きな成果を残した。それにより集団的自衛権の行使が可能になった。政権終盤では、弾道ミサイルの攻撃阻止のための、敵ミサイル基地に対する攻撃能力保持の検討にまで着手したが結果は出せなかった。これは現政権への宿題ではないか。合わせて急ぐべきは尖閣防衛の具体策などだ。

こういう緊迫した内外状況の下で、のんびりと国民投票法改正案の審議をやっているのである。立民も了見を改めなければ、先細りするだけだろう。こういう体たらくだから今や保革両立の2大政党論議など誰もしなくなった。速やかに門前の揉め事?を片づけるべきだ。(2021・4・16 山崎義雄)