ババン時評 「反撃能力」が立民の試金石

政策提言をやめて批判政党に先祖返りした立憲民主党の情けなさが目にあまる。泉代表は党内左派系の壁に阻まれて憲法改正論議もままならず逃げの一手でこれまできたが、目下の政局でも自衛隊の反撃能力(敵基地攻撃能力)の問題で明快な判断を迫られながら結論を出せずリーダーシップも発揮できずに醜態をさらしている。

泉代表はこの正月に乃木神社に参拝したとツィッターに投稿したが、これに「軍人を神と崇める行為」「軍国主義に追従すると批判されてもしかたがない」などの批判が集中したという。これに泉氏は、「何だか息苦しい。近所の神社で祈ることが『軍人を神と崇める行為』とされるとは、とコボしたという。多分そんなことであり、まさか日本の反撃能力をいかにすべきか乃木将軍に聞きに行ったわけではないだろう。

泉代表は、昨年末には「台湾有事にはリアリティーがない」などとして「反撃能力」保有に反対の態度を示した。また党の憲法調査会では、改憲に関する党見解のとりまとめも先送りされた。今年に入っても党内の護憲派を抑え込めず、当面、憲法審査会の審議には応じない(応じられない)方針だという。本当に台湾有事にはリアリティーを感じないとすれば政治家の資格さえ疑われる。そして「反撃能力」保有に反対となっては、野党第一党の責任も果たせず、政権の座にはいつまでたっても近づくことはできないだろう。

ちなみに、「反撃能力を持つことに賛成か反対か」について、大手紙の世論調査では、「賛成」が毎日の66%に日経の65%が続き、産経は60%、そして朝日56%、読売52%だ。総じていえることは、毎日がわずかながらトップであることと朝日より読売の賛成票が低いのは違和感?があるものの、今や国民の半数以上が反撃能力の保持に賛成する状況になっていることは明らかだ。あえていえば6割以上の国民が反撃能力保有の必要性を認める時代になったといえそうだ。

こうした国民の意思を知りながら泉代表は、憲法審議会の審議を巡って、共闘をくむ維新の馬場代表に「(走りにくい)『重馬場』であってほしい」と苦衷を漏らし、はやる維新をけん制したという(読売2・16)。まさか馬場代表の名前から競馬場を連想して、雨などで馬の走りにくい重馬場になってほしいと願ったわけではなかろうが、ここにも問題先延ばしで逃げの姿勢をとる泉代表のホンネが見える。

しかしこれでは野党第一党として国民の負託に応えられるはずもない。「反撃能力」は泉代表と立憲民主党にとっての試金石だ。泉代表は党を割ってでもやる気概を示して反撃能力を認め、現実路線への転換を図るべきだ。その上で自民党と互角の立場でその先の憲法論議を争うのでなければ国民の支持も政権の座も遠のくばかりだろう。(2023・2・19 山崎義雄)