ババン時評 バレた日銀物価目標の欺瞞・1

任期の10年間をムダに過ごして去った黒田東彦日銀総裁による物価目標政策の大ウソがバレた。このほど黒田日銀スタート当時の日銀の議事録が公表され(7・30)、マスコミが一斉に報じた。黒田金融政策は大失敗だった、大ウソだったと報じているわけではないが、折りに触れて庶民感覚・生活者の視点から黒田金融政策を批判してきた当方「ババン時評のババン爺」からすれば、この議事録によって黒田日銀による物価目標のでたらめさ加減、大ウソの舞台裏がバレたとしか言いようがない報告書の内容である。

議事録は年2回、10年経過後に半年分がまとめて公表されるようだが、今回の報告書は、2012年12月に発足した第2次安倍晋三政権が求める2%の物価目標導入に否定的だった白川方明日銀総裁が13年3月に任期途中で退任、後任の黒田東彦総裁がアベノミクス「第1の矢」として異次元の金融緩和に踏み出した時期に当たる。

「時事エクイティ」(7・31)等の報道によれば、安倍政権が任命した積極緩和論者の黒田氏の下、日銀と政府の関係は対立から蜜月へ変化したが、ここから「壮大な社会実験」とも呼ばれる異次元緩和は出口の見えないトンネルに入っていく。2年以内2%の物価目標が達成されなかっただけでなく、何回か先延ばしされながらついに黒田氏の任期10年間での目標達成はならなかった。

白川氏から総裁を引き継いだ黒田氏は、就任後初めて臨んだ4月3、4日の会合で居並ぶ政策委員を前に「これまでと次元の違う緩和を行う必要がある。戦力の逐次投入は避け(物価)目標をできるだけ早期に実現する」と切り出した。金融緩和を唱える「リフレ派」の論客で副総裁に就いた岩田規久男氏も「一番大事なことは、2年程度で2%の物価目標を達成することだ」と訴えた。

最初から当欄「ババン時評」が物価目標政策を批判してきたのもそこで、需要があるからこそモノの値段が上がるというのが経済のイロハであり、需要に応じて供給が増えるからこそモノの値段が上がり、それを経済成長と言うはずなのに、需要を無視してモノの値段を挙げようというのはムチャな話である。異次元の金融緩和でカネを市中にジャブジャブと注ぎ込むことで、2年で2%の物価高にもっていこうというのだから、生活者はたまらない。

黒田総裁は財務官やアジア開発銀行総裁を歴任した金融政策のプロ、岩田氏は著名な経済学者で上智大学学習院大学名誉教授。そこに目を付けてそれぞれ日銀総裁・副総裁に任命したのが安部氏である。カネが足りなければ国家紙幣を発行しろなどという岩田先生の金融理論を奇異に思うのは私だけではなかろう。

3氏には共に庶民感覚をあまり持ち合わせていないという特徴がある。難しい金融理論は分からないが、安倍・黒田・岩田の3氏に苦言を呈してきたのは庶民目線でおかしいことをおかしいと言ってきたまでだ。もう少し書きたかったが指数が尽きた。改めて続きを書きたい。(2023・8・5 山崎義雄)