2021-01-01から1年間の記事一覧

ババン時評 「自己否定」と無常感

人間が死ぬとはどういうことか。哲学も宗教も文学でさえも永遠に解けない命題である。劇作家であり哲学者として知られた山崎正和さんが、最後の評論集『哲学漫想』を残して昨年(2020年8月)、86歳で亡くなった。業績は幅広いが、とりわけ論考を通じて人間に…

ババン時評 横綱の「勝負」と「品格」

名古屋場所で優勝した照ノ富士が見事、横綱に昇進した。伝達式で照ノ富士は「不動心を心掛け、横綱の品格、力量の向上に努めます」と口上を述べた。「横綱の品格」が重く感じられ、先輩白鳳のようにはならないという決意にすら聞こえた。NHN大相撲中継の解説…

ババン時評 中国は必ず沖縄を狙う

戦争反対は万人の願いだ。しかし国防の必要性も否定しきれない。いま中国は武力に訴えても台湾を攻略すると高言しているが、いったん事あれば、台湾と同様に、中国が沖縄を取りにくるという見方が強まっている。しかし沖縄の米軍基地問題は迷走を繰り返して…

ババン時評 美術と創造の基本はリズム

美術や芸術などの基本はリズムだという話をしたいのだが、その前に思い出話を一つ。陸自の一佐で退職したMさんは防大出の優秀な戦闘機乗りだった。気さくな人柄で酒が好きで、現役の時はよく仲間でスナック通いをしていた。気が乗ればマイクを握って時の流行…

ババン時評 現実型次期韓国政権への期待

いま中国の若者は無気力になっていると言われるが、韓国の若者は政治を動かす原動力として注目されている。ソウル、釜山の両市長選で与党候補を惨敗に追い込んだのも若い世代だった。韓国内でもすでに文在虎大統領の動向に関心は薄く、焦点は来年の韓国大統…

ババン時評 他人の褌で相撲をとる中国

先ごろ、中国の習近平主席は、中国共産党創設100周年の式典演説で、中国が世界第2位の経済大国になったのは中国共産党の歴史的業績だとして、ますます「一党支配体制」を強化する姿勢を示した。中国は今、「共産党支配」と「経済力強化」をどちらも欠かすこ…

ババン時評 夫婦同姓婚は日本の文化

今の法律では、結婚届を出すに当たって、夫婦いずれの姓を選ぶかは二者択一で、それぞれが自分の旧姓を選択して届け出ることはできない。この夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は「両性の平等」などをうたった憲法に違反するとした、都内の男女3組による…

ババン時評 “漂流国家”韓国の行方

韓国文政権が波間を漂うように揺れている。文大統領は、残り任期1年を切ってレイムダック化しながらも、外交面では、いまだにオリ・パラ開催の日本も巻き込むなどして、米国と北朝鮮の橋渡しをしようとあがいている。内政では直近になって、元慰安婦、元徴用…

ババン時評 安保音痴・改憲忌避の立民

立憲民主党を安保オンチというのは、当たらないかもしれない。日本を取り巻く安全保障環境の悪化は立民党議員も知らないはずがない。しかし立民には強烈な改憲アレルギーがある。だから憲法改正の是非を国民に問う「国民投票法」改正の国会論議を忌避し続け…

ババン時評 運と偶然に感謝する人生

誰の人生にも、運不運が付きまとう。人生の折々に遭遇する問題を正しく判断し、適切に処理することは容易ではない。先に、当欄で「気にし過ぎるな運の良し悪し」に関して、ローゼンタール著『それはあくまで偶然です』を引用した。そこでは統計軽視の偶然論…

ババン時評 文政権の迷走と決別した判決

今回6月の、元徴用工らによる損害賠償請求を却下したソウル中央地裁判決は、ようやく文政権の迷走から決別した判決だ。つまり文大統領がシナリオを書いたといわれる2018年の韓国大法院(最高裁)による賠償命令判決を真っ向から否定する判決となった。 特に…

ババン時評 夫婦の愛情は以心伝心

これは愛情表現の欠如でもめる友人夫婦の話である。アイラブユーは挨拶代わり、体いっぱいで愛情を表現する欧米と違い、日本人、とりわけ高齢者にはこの手の表現力がない。男と違って女は、いくら歳をとっても、相手の愛情を確かめたい。愛されていたい。安…

ババン時評 どんぐり国家の背比べ

何年か前に、「〇〇の品格」という題名の「品格本」がブームになったことがある。そのはしりは浮ついた品格本とは一味も二味も違う、藤原正彦著『国家の品格』(新潮社)だ。同書の主張は、「グローバル化」という低俗な世界の均質化を拒否して日本の矜持を…

ババン時評 気にし過ぎるな運の良し悪し

コロナによる「閉塞感」は心身の健康上、実によくない。考え方がどうしても暗くなりがちだ。これでは「運」にも見放されかねない。人はよく運がいいとか悪いとか言う。どんな人格者でもまったく運の良し悪しを気にしない人はいない。宝くじを買ったりレース…

ババン時評 生かされる間、生きる

一向に衰える気配を見せない新型コロナウイルスの禍で、不条理な「死」というものについて、身近に考えさせられる今日この頃である。そんな折りに、よく手書きで長文の手紙をくれる先輩のYさんから、『最近「死」ということを考えるようになりました』という…

ババン時評 抗えぬものへの対処法

人生において、人間社会を生きていく上において、抗(あらが)い難いこと、甘んじて受容するしかないことは誰にでも起きる。強者と弱者で「勝率」に相当な開きはあるだろうが、強者といえども百戦全勝とはいかない。奢れるものは久しからず、「盛者必衰」で…

ババン時評 外国人が日本人になるまで

日本の将来にとって一番の問題は、少子化による人口減少であり、日本が“自力”で人口を増やせないとすれば、有効な解決策は移民の受け入れしか方法がないということになりそうだ。そしてその人たちにどのように日本社会や文化に溶け込んでもらうかということ…

ババン時評 マルクスの亡霊が出た

今、だいぶ売れている一書に、斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(講談社新書)がある。表紙には当代きっての論客達の賛辞が並ぶ。本書のミソは、晩年のマルクスがたどり着いた(そして未公開だった)「脱成長コミュニズム」構想だ。それは、「協同的富」を…

ババン時評 移民受入れ以外に未来なし

早くから問題が見えていたのに、何ら有効な手を打たずにいた、というより打てなかったのが、少子高齢化による人口減と労働力不足の解消策だ。フランスの歴史・人口学者のエマニュアル・トッドさんは、30年以上も日本に向けて事の重大性を警告してきたが、受…

ババン時評 「正直、困惑」した文大統領

元慰安婦らが起こした裁判の思いがけない判決に、文在虎大統領が「正直、困惑している」と語った。今年に入って、韓国ソウル中央地裁で日本を相手どって元慰安婦が起こした2つの賠償請求裁判の判決がそれぞれ1月と2月に出た。ほぼ同じ訴訟内容で、しかも同じ…

ババン時評 資本主義から「人新世」へ

いま、地球と人類の歴史の新しい「時代区分」として「人新世」(ひとしんせい、あるいはじんしんせい)という考え方が注目されている。これまでの地球の地質的な時代区分は、地質や気候や生物相など自然の大変動期で区分されてきたが、現代は、自然破壊など…

ババン時評 土光さんが泣く東芝の身売り

日本産業界の名門・東芝が、英資本による買収提案を受けて揺れている。東芝は日本を代表する電機メーカーとして、戦後の日本経済を牽引した。初期の経団連では2代石坂泰三、4代土光敏夫と2人の会長を輩出した。今回の買収劇で真っ先に頭をよぎったのは土光敏…

ババン時評 「改憲」遥か、門前論議

また野党、というより立憲民主党が国民投票法を巡って逃げの姿勢だ。こんなことでは、二度と野党に政権が回ってくることはないだろう。4月15日、衆院で、憲法改正の是非を国民に問う「国民投票法」改正案の審議が始まった。しかし、ハナから立憲民主党立民と…

ババン時評 日米協調に水を差す日本?

米のバイデン政権は、予想に反して?意欲的に対中包囲網の構築を進めている。ブリンケン米国務長官は、中国による新疆ウイグル自治区における人権侵害について、「集団殺害(ジェノサイド)」ありとまで明言した。中国包囲網に欧州も同調し、米国、欧州連合…

ババン時評 日中韓の宗教的距離感

日中韓はそれぞれいくつかの異なる宗教を持っている。中国は、共産主義独裁国家にもかかわらず仏教、道教など古来の5宗教を「公認」している。韓国には、仏教、儒教などがある。日本には仏教、神道などがある。日本人は無宗教だと言われることがあるが、それ…

ババン時評 「米の属国日本」の気概を

バイデン米大統領は、先ごろ、就任65日目に開かれた初の記者会見で、中国についてこう言及した。「中国の目的は世界を主導し、世界で最も豊かで強力な国になることだが、私の任期中にそれは起こらない。なぜなら米国は成長し続けるからだ」-。多分これは、…

ババン時評 たかり根性と負け犬根性

経済とは経世済民、世のため人のために国が行う根幹的な政策だ。したがって、新型コロナによる飲食業やサービス業などの経営難と、失業などによる国民の生活苦を救うための財政支出は、まさに国による喫緊の経済政策だ。ところがi今、ワル知恵を働かせた「持…

ババン時評 自衛権に準じた尖閣防衛を

先にババン時評『のんき過ぎる「危害射撃」』を書いた。そこで引いた小説「邦人奪回」における官房長官の「奪回作戦」の狙いは、毛並みは良いが決断力と統率力に欠けて支持率の低下した総理の政権浮上と、政敵大臣の追い落としにあった。作戦は隊員の犠牲者…

ババン時評 「自殺念慮」をキャッチせよ

コロナ下の世相は暗い。昨年の自殺者は11年ぶりの増加となり、約2万1000人に上ったという。しかも女性や若者が多いというのがやりきれない。原因はいろいろと挙げられる。そもそも時代の流れは、人のつながりが薄れていく傾向にある。 コロナがそれに拍車を…

ババン時評 のんき過ぎる「危害射撃」

政府は、ますますエスカレートする中国の「尖閣侵犯」に対処して注目すべき「見解」を打ち出した。海上保安機関・海警局の「海警船」や武器を持った民間の漁船などの「民兵船」が尖閣諸島に接近した場合、自衛隊が、相手を負傷させる可能性のある「危害射撃…